私の中には三人の私がいる
怒りの発端
子供達同士で遊んでいたのだけど、一人の女の子がずっと私に文句を言ってくる。
〇〇ちゃん(うちの娘)全然自転車貸してあげないよ。
ずっと自分で使ってるよ。
□□ちゃんには貸したのに△△ちゃんには貸さないよ。
入っちゃいけないところに入ったよ。
邪魔してるよ。
うるさい。
私はこういう時、自分の子を擁護したりしたくない。
怪我したからといって大袈裟に大丈夫?!と駆け寄る親になりたくない。
どうでもない怪我なことがほとんどだし、時間が経てば治るし、本当に酷ければ救急車呼べばいいんだから。
母親が必死に心配したところで怪我の度合いが変わるわけじゃない。
理不尽な主張には言われた本人が対応するべきだし、
子供同士の争いに親が介在することは子供の世界に歪みや複雑性をもたらすことになると思う。
話が逸れたけど、
状況だけ見ると、さっき娘は自転車を持っていない子に自分の自転車を貸していて、今は返してもらって自分で使ってる。
告げ口してきた子は、〇〇ちゃんには大きくて乗れない。お母さんが危ないからダメって言う。そんな理由で一度も貸してない。
負かしたい。やり込めたい。あなたは間違ってる。そして私の考えが正しい。そう言いたい。
子供相手に口論して勝ちたい気持ちがふつふつと沸いてくる。
その子のお母さんも離れたところにいたので、必死に堪えたけど、
さっき貸してあげてたよ。
とだけ言った。
だけど今度は、その一言だけ言うと我が子を擁護しているように聞こえる気がして、なぜか娘にイライラし始めた。
お前が自転車を貸せば私はこんなに無駄に腹を立てなくて済むのに。
帰りに、
自転車もっと貸してあげたらよかったのに。
と娘に言うと、
貸した!貸したのに貸してないって言われた!
って泣き出した。
あああー!!!
もう、子供めんどくさい!人間めんどくさい!
じゃあ自分で言い返せ!
自分は貸したから今度はお前が貸せってそいつに言えよ!
自転車なんか燃やしたい!
みんな死ね死ね死ね!
突発的に怒りの感情に覆われて、叫びながら帰ってきた。
三人の私
周りの視線を感じる。今日は土曜日だ。人が沢山いる。叫んでる私がいる。みんなが見てるなあ。収まらないかなあ。冷静で俯瞰的な私がいる。
怒りに飲まれて暴れていたのは別の強くて自信に満ちた私。誰よりも賢くて誰にも負けない。知能こそ強さ。強さこそ力。私の主張は絶対に正しい。私の存在は誰よりも正しい。みんなが憎い。みんなが敵。みんな燃えてしまえばいい。自分以外の人間もものも世界も、全部全部消えればいい。破壊。破滅。それこそが至上。
その一方で弱くて自信のない私。子供2人連れて何か無意味なことを叫んでる不細工な女。周りから見たら社会悪でしかない。恥。自分をコントロールできない頭の悪い恥ずかしい私。この世界に暗と悪しかもたらさない不要な人間。誰か助けて。私の存在を消して。殺してくれ。
私は一人のはずなのに、三人いる。
私の中にいる三人はいつもバラバラに動く。
どれが本物かもわからないし、絶望的なことに、私は三人の私、どれも大嫌い。